Book.「脳から無意識ニーズを探る『アップルのリンゴは なぜかじりかけなのか?~心をつかむニューロマーケティング~』」

「アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?」
(廣中直行著、光文社)

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「アップルのリンゴは なぜかじりかけなのか?~心をつかむニューロマーケティング~」(廣中直行著、光文社新書)は、マーケティング共創協会研究主を務める著者が、「ニューロマーケティング」をテーマに、専門家と一般読者が読んで意味のある本を目指し書かれました。何よりも商品開発の鉄則は、人々が気づいていない「欲求」を呼び覚ますモノを提示することであり、そのためのより確実で効率的な戦略が「ニューロマーケティング」だとまとめています。

1970年代に心理学と経済学が結びついて「行動経済学」が生まれました。それに脳科学が加わり「ニューロエコノミクス(神経経済学)」分野ができ、この実験の過程で生まれたのがサブタイトルの「ニューロマーケティング」です。
分かりやすくいえば、従来のモニタリングなどの調査などにより消費者動向を調査するのではなく、脳科学の立場から消費者の脳の反応を計測し、深層心理や行動を把握しマーケティングに活用する方法です。
 
 

アップル復活に認知科学者

メインタイトルからアップルについて書かれた本のイメージもありますが、本書では「ニューロマーケティング」の手法や、アップルの展開のほかにも多くの企業の成功事例やヒットを生み出す商品の法則がまとめられています。
 各章のテーマごとに、幼児向け人形開発者とテレビ番組プロデューサーの対談も掲載されていて、実際に現場で働く人たちが、世の中の動きや自分たちの仕事をどのように考え、商品開発や番組制作に活かしているのかが分かります。アップルの商品開発についても、各章のテーマごとに書かれ、読みやすい内容になっています。
   

業績不振が続いていたアップルにスティーブ・ジョブスが復帰したのは1997年です。マイクロソフトとの提携で地盤を固めたジョブズは以降、パソコン「iMac」、携帯音楽プレーヤー「iPod」、そしてスマートフォン「iphone」を投入し、見事に業績を回復させました。ジョブズの経営手腕はもちろんですが、各製品のデザイナーも注目されました。しかし、アップル復活の要因はそれだけではなく、ドナルド・ドーマンという著名な認知科学者をフェローとして招聘したことにありました。会社の厳しい状況が続くなかで、「人間の本質とは何か」「人間のこころはどのように働くのか」について研究していたのです。
 
 マーケティングでは商品には「機能的価値」と「情緒的価値」があり、前者は客観的数値で表せる性能で自動車などの加速性能などが挙げられます。後者は商品が人の「こころ」に訴えるメリットを指します。消費者が商品を買うか買わないかは、好きか嫌いか、値段が高いか安いかを決めるのは「こころ」で、そのためには脳の働きを調べれば商品がどう思われるかは予測がつくということが特徴です。
 
 

サプライズでヒット商品

「情緒的価値」を高めるにはいくつか法則がありますが、2007年の新商品説明会の会場でアップルのジョブズは「iphone」について発表し会場に詰めかけた人々を「サプライズ」させました。説明会の過程でジョブズは「iPod」、携帯電話、ブラウザの各商品について話しながら、最後にこの3つを合体させた「iphone」を見せました。こうして誰もが予想できなかった商品は爆発的ヒットにつながったのです。
 
「サプライズ」とは少し違いますが、ある日、社員が腕時計を落とし壊してしまったことから、その社員が落としても壊れない商品を提案し開発されたのがカシオの「G-SHOCK」です。この商品は発売当初にアメリカで放送された「アイスパッカーの代わりに、『G-SHOCK』をたたく」というコマーシャルが、やらせではないことが証明され、消防士などで売れ始め火がついたといいます。本書にはこのように、「ニューロマーケティング」活用によっての成功の事例や法則が数多く挙げられています。
 

Comment(ブログ筆者)

 ●脳の働きと消費行動の関係
 まず、本書タイトルの「アップルのリンゴは なぜかじりかけなのか」を見た時に、すぐに読みたいと感じました。「iPod」「iphone」などアップルの商品は自分の生活には欠かせないものだからというのが理由で、この各商品についてはいつのまにか購入数も多くなり、長い付き合いになっています。
 
 やはり、タイトルのつけ方からも内容に期待できることが予測できたのですが、期待通り面白い内容でした。テーマである「ニューロマーケテイング」については、人の深層心理と消費行動について関係が深いことからも関心があり、その点で脳の働きがいかに影響しているかを再認識しました。考えてみたら、「アップルのリンゴは なぜかじりかけなのか」は、とても気になることですね。
 もちろん、読者を惹きつけるインパクトのあるタイトルだけでなく、本書にはこのリンゴのデザインが生まれたいきさつや、「かじりかけ」の意味も書かれています。
 
 日本は現在、少子高齢化でモノは市場にあふれ、いかに新市場を創出できるかが、ヒット商品を生むといわれています。そのような状況では各企業開発者の努力はすざましいものがあると思われますが、人の本能に訴求する「良い気分にさせる」「サプライズ、意外性」などがヒット商品につながることは、これからも変わらないような気がします。(今回に紹介させていただいた本は新刊ではありません。ご了承ください)

関連本

「なぜ脳はなんとなくで買ってしまうのか」(田邊学司著ほか、ダイヤモンド社)

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