Book.(漫画)「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」安彦良和 最後の長編「乾と巽 ザバイカル戦記②」  

「乾と巽~ザバイカル戦記」
(安彦良和著、講談社)

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 「機動戦士ガンダム」の生みの親の一人であり、「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」が爆発的なヒットとなった漫画家でアニメーターの安彦良和先生の最後の長編が「乾と巽(いぬい と たつみ)~ザバイカル戦記~」(講談社)です。このほど第2巻が発売されました。
 安彦先生の日本近代史シリーズ4部作の4作目にあたる同作品では、日本のシベリア出兵をテーマに、帝国陸軍第七師団の砲兵・乾(いぬい)軍曹と、浦潮日報の記者・巽(たつみ)を中心に、一兵卒と一記者の目から、ロシアの戦場を駆け抜けた男たちの生き様を描いています。

 

日本近代史シリーズには、明治時代中期から末期の日本や朝鮮、清を舞台に日清戦争や辛亥革命期に生きた人々を描いた「王道の拘」(同)、明治時代後期の日本やアジアを舞台に日露戦争に翻弄された青年を描いた「天の血脈」(講談社)、昭和初期の満州国を舞台に日豪ハーフを主人公に「トロツキー計画」をテーマにした「虹色のトロツキー」(潮出版)があります

「乾と巽~ザバイカル戦記~」は「虹色のトロツキー」の中の登場人物たちの、父親世代にあたる年代の男たちの物語となっています。
 「乾と巽(いぬい と たつみ)~ザバイカル戦記~」の「第1巻」では1918年(大正7年)の日本軍のシベリア派遣部隊がウラジオストックに入った「シベリア出兵」の第一日からスタート。日本軍はアメリカ・イギリス・フランス軍とともに北上し、オーストリア軍と戦闘。この時、偶然に乾軍曹は、巽 浦潮日報記者を助けます。「シベリア出兵」史上最大で唯一とされる正面決戦「クラエフスキーの会戦」で日本軍が圧勝する様子などが描かています。

 

ロシア革命にどう向かったのか

当時、七師団に属していた乾軍曹は、満州里に着任しますが、特別守備隊の顧問らに囲まれます。しかし、乾軍曹は大勢の敵を相手にも怯まずに敵を全員とも倒してしまいます。「第2巻」では乾の幼い頃のエピソードも描かれます。
 北海道北見国の紋別郡の村に生まれた乾は、酒好きの父親に夜中に酒を買ってこいと怒鳴られ、雪深い山道を遠い酒屋まで出かけます。そこで出会った人物に柔術を習うように勧められるのです。
 
 そんな思い出に長く浸る間もなく、乾はウラジオストクへの行程の戦闘では、夜中に列車から飛び降り戦闘を続け、相手をピストルで撃ち、仲間は殺した敵の耳をそぎ、目玉をくりぬくのです。
 一方、巽 浦潮日報記者は提督を取材するために、ゾロ・トーイ劇場に出かけます。そこで偶然にも劇場に現れた乾軍曹と再会するのです。日本近代史シリーズの最終作では20世紀最大の事件ともいわれる「ロシア革命」に日本人がどう向き合ったのかが描かれますが、その序章がスタートしました。
 

国際政治の大事件背景に描く

Comment(ブログ筆者)

「機動戦士ガンダム」シリーズ新作は2020年7月26日から映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(原作・富野由悠季、矢立肇、村瀬修功監督)が公開。今年もアニメのガンダムシリーズはローカル局のどこかで再放送され、「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」に至ってはNHKが春から放送をスタートするなど、絶大な人気を得ています。
 
 40周年記念プロジェクトも10月22日からは始まりファンを魅了し続けています。日本はまさにウルトラマン同様に、不滅の金字塔を打ち立てたと言っても過言ではありません。世界に誇れるアニメや漫画が日本には存在し、原作者が存在することはまさに貴重な宝と言えるでしょう。
 
 その作者がどんな人物なのかは、作品を時系列に読み進めていくだけでも、その思考の奥深さに圧倒されてしまいます。
 日本近代史シリーズなど数多くの作品が証明していますが、ガンダム生みの親の一人である安彦先生の創作力は、ことガンダム以外にも十分に発揮され続けているのです。「機動戦士ガンダム」は宇宙を舞台に、地球から移民してきた人々の中の戦争を描いていますが、「機動戦士ガンダム THE ORIJIN」においても、戦争をテーマに、その中での家族愛や友情についても描かれています。
 
 日本を代表するアニメには数多くの名作がありますが、「ウルトラマン」「エバンゲリオン」「機動戦士ガンダム」「宇宙戦艦ヤマト」の根底には原作者の実際の戦争体験など、戦争が作者自身に影響している作品があります。では、新作「乾と巽~ザバイカル戦記~(2)」はどんな作品になるのでしょうか。
 
 「安彦良和の戦争と平和」(杉田俊介著 中央公論新社)の中で、安彦先生は以下に述べています(ブログ筆者が抜粋し作成しています)。
 「ほとんどの人はシベリア出兵は失敗だった、名分のない軍事行動だったと振り返っています(中略)。日本はシベリア出兵では最後まで現地に残って醜態をさらして、世界の笑いものになった、といわれるけど、残らざるを得なかったわけですよ。(中略)
 日本はあれほどの国際政治の第一線に立たされた事件は、後にも先にもなかったのです。そういう事件の渦中に、無名の一兵士が飛び込んでいく。それが『乾と巽』の物語になるんですね」

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