Book.消費者の本音を知りヒットを生み出す「なぜ『つい買ってしまう』のか?~人を動かす隠れた心理の見つけ方」

「なぜ『つい買ってしまう』のか~人を動かす隠れた心理の見つけ方」
(松本健太郎著、光文社)

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 ヒット商品やよりよいサービスは多くの企業が存続していく上で重要なものになります。職種や職業を問わず、また個人が仕事をしていく上でも大切ですが、「なぜ『つい買ってしまう』のか?~人を動かす隠れた心理の見つけ方」(松本健太郎著,光文社)は、少子化を背景に経済が減速する中で、「物が売れない」「サービスを提供しても使ってもらえない」人のために、「インサイトに基づく商品・サービス開発」という新しい考え方を提示し、そのための手法を紹介しています。同書では「インサイト」を「人を動かす隠れた心理」と定義しています。
 
 

では、どうすれば、インサイトにもとづいたヒット商品を出せるのでしょうか。そのヒントとしてアメリカの鉄道会社は「人や物を運ぶこと」と捉えず、「車両を動かすこと」と定義したために自動車や航空業界との競争に敗れ、映画業界は「エンターテインメント産業」と考えるべきだったのに、「映画を制作する産業」と近視眼的に定義したために、テレビとの競争に敗れたなど、1960年にセオドア・レビット元ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授が書いた「マーケティング近視眼」という論文を紹介しています。
 
 著者の松本健太郎さんは、エンジニア、データサイエンスとして活躍した後、インサイトリサーチやアイデア開発の手法を提示するデコムに入社し現在はR&D部門を統括し、オポチュニティ・インサイトの開発・検証など新しい手法の構築に携わっています。著書に「データサイエンス超入門」(毎日新聞出版)、「誤解だらけの人口知能」(光文社)などがあります。

キーは 機能価値と情緒価値

例えばビ食品メーカーで働くAさんがビスケットの売り上げを伸ばすよう上司から指示されたとします。ビスケットは食べなくても困ることはありませんが、2019年の市場動向をみると微増で、チョコレートはビスケットよりも市場規模は伸びています。ビスケットよりもチョコレートが伸びているのは何らかの理由がある筈です。
 
 そこでキーになるのがインサイトを見つけるヒントになる価値観です。価値には単なる「事実、特徴」、物理面、機能面の「機能価値」、感覚や感情につながる「情緒価値」があります。価値という点でビスケットは「サクサクしていて確かな食感がなく、食べても自分のエネルギーが回復したように感じない」という機能価値に対する不満があったとします。
 
 これがインサイトです(インサイトは8~10件は見つけ出す必要があります)。そこで「確かな食感が口の中でしばらく続き、噛むたびに回復していく」という価値提案を行い、具体的な物に落とし込んでいくということになります。重要なのはビスケットの市場や競合商品を見るのではなく、消費者、つまり人間を見ることが重要だと指摘しています。では自社ブランドではなく、競合ブランドではなく市場ではない、人間を見るにはどうしたらいいのでしょうか。
 
 人間を見るためにデコムでは道標として「美容、ファッション」「健康、ヘルスケア、医療」「買い物、買い方」「仕事、働き方」「IT、メディア、コンテンツ」「恋愛、友人関係」など「生活14カテゴリ」を開発、おおよそ人間がこのカテゴリにお金や時間を費やしている範囲をまとめています。
 
 また、インサイトを発見するための前段階となる新規事象については、「執着心がなければ吸収できる シェイクスピアでゆるっと英語学習」や「誰の目も気にせずスキップできる  平日昼間はリラックスできる贅沢時間」などウエブ上で行うマーケティングリサーチをもとに、「事象を表すタイトル+イラスト+事象内容+個人のデモフラティック(解説)」として提供しています。
 
 

なぜか、つい買ってしまう魅力

Commentブログ筆者
 日本の経済力が減速の一途を辿っているのは、それまで日本の経済力を支えてきた基幹産業といわれてきた製造業が国際競争に負け続けていることや少子化が原因ですが、その中でもスマホやスマホ周辺機器は回復基調、家庭用ゲーム関連などは好調にしています。
 
 これはスマホの新規性と、「ポケモンゲーム」のようにこれまでの家庭用ゲームにGPS機能を付加させ、家の中でなくスポットのある公園やショッピングセンターなど外でゲームを楽しむという、ある意味でそれまで家に籠ってプレイするだけだった、ユーザーのインサイトを探し当てた結果に拡大している可能性があります。
 「ポケモンゲーム」については、仲間同士でギフトをプレゼントしあったり、自分の仲間がどこでゲームをして、何をゲットしたのかも知ることができるなどコミュニケーション効果もあります。これも「こんなゲームがほしかった」というユーザーインサイトに応えた要素の一つといえるでしょう。
 

高くても購入する心理


 また、「なぜ『つい買ってしまう』のか?」の中でも取り上げていますが、悪玉菌と闘う乳酸菌(PA3)を含むという機能価値を全面に打ち出した「明治プロビオヨーグルトPA-3」(明治)も好調に推移しています。
 同社はチョコレートについては早期から機能価値の訴求を強化しています。例えばブログ筆者も食べ続けている「チョコレート効果CACAO」シリーズでは「同72%」「同86%」「同95%」をラインナップ、最近は「アーモンドチョコレート」の「アソート」でアーモンドで食物繊維、オレイン酸、カカオでポリフェノール、食物繊維と大きく明記し「カラダにうれしい組み合わせ」としています。価格も他社品と比較し200円以上高いですが、ブログ筆者は「つい、買ってしまう」のです。
 
 他の商品とは違い通信販売でなく店頭販売が多い食品では、まずユーザーに目立つように店頭に並べられるかが勝負になりますが、やはり、機能価値というのは訴求ポイントが高いですね。
 納豆などは数多い商品が店頭に並びますが、1個の単価が他社品と20円ほど高くても、「国産」「国産大豆100%使用」とネーミングに大きく表記してある商品を購入してしまいます。これも健康面を考慮し「つい、買ってしまう」商品なのです。

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