Book.ボクシングバンタム級WBA・IBF王者 井上尚弥の結果の出る思考術「勝ちスイッチ」

「勝ちスイッチ」
(井上尚弥著、秀和システム)

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 11月7日、さいたまスーパーアリーナで世界最強を決めるワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級決勝が行われ、WBA・IBF世界バンタム級王者の井上尚弥選手(大橋ジム)が、フィリピンの英雄マニー・パッキャオに次ぎ「伝説」といわれる5階級制覇王者のWBAスーパー王者のノニト・ドネア(フィリピン)を3-0の判定で下し優勝しました。
 
 WBSSとはボクシングの異なる団体の世界王者ら8人が争うトーナメントで、2017年の第1回目は賞金総額50憶円といわれ、スーパーミドル級で実施されました。第2回のWBSSバンタム級トーナメントは昨年10月にスタートし、井上選手は1回戦で元WBAスーパー王者のフアンカルロス・パヤノ選手(ドミニカ)を相手に1ラウンドでKO勝ち、2回戦目の元エマヌエル・ロドリゲス(プエリトルコ)にも2ラウンドTKOで勝利を収め、決勝へと進んだのです。

 

決勝は井上、ドネア両者の壮絶な打ち合いで、2ラウンドには井上が右目上をカット(後に眼底骨折と判明)しましたが、その後も怯まずに攻撃、両者が互角とも見える中で、11回に左をドネアのボディーに炸裂しダウンさせました。判定は一人が1点差としたものの、他二人は、5点と8点差の井上の勝利と採点していました。まさにモンスターの通り、怪物の力を証明したのです。
 「勝ちスイッチ」(井上尚弥著、秀和システム)は、天才、モンスターといわれる井上選手の、ボクシング論や家族、生き方についてまとめられたものです。

血のにじむ練習をしてきた

自分が天才と呼ばれることについて井上尚弥選手自身はどう思っているのでしょうか(本書よりブログ筆者が抜粋し作成しています)。
6歳で、町田協栄ジムに通っていた父・真吾の姿に憧れてボクシングを始めた。小学生の頃からスパーリング大会で上級生に勝ち、高校では7冠を獲得して、当時からプロボクサーたちとスパーリングしてきたが、当時から天才と呼ばれるほどのセンスがないことを自覚していた。父はメディアの取材で「天才ですね」とヨイショされると、「尚は血のにじむような練習をしてきたことを知らないのに、簡単に天才などという言葉を使わないでくださいよ」と冗談半分、本気半分にたしなめることがある。
 
 ボクシングはスポーツだが、ウエイト階級制であり選手たちはリミット内の体重で試合に出場します。スポーツとはいえ、拳で相手にダメージを与える危険な格闘技でもあるのです。絶食を何日も強いられた上に、リング上では大きな打撃を脳にも受けます。まさに「命をかける」スポーツと見る一般人は多いですが、井上選手は「リングに命はかけない」といいます。
 

100%の準備でできる自信

「命をかけるボクシング」は、僕が理想とするボクシングの対局に位置する。殴り合いにいくのだから、本能も感情も覚悟もある。しかし、求めるのはそういうボクシングではない。2本の腕だけで何ができて何を魅せられるのか。情熱や殺気、そして冷静さのバランスをとりながら、勝つためのデザインを描き、その作業を遂行していく。「打たさずに打つ」「パンチをもらわずに勝つ」究極の心技体の完成作品をそこに求めている。
 
 では、メンタル部分はどう管理しているのでしょうか。
 周りが見えなくなるパニック状態は、「負けたらどうしょう」「相手はどんなパンチを放ってくるのだろう」といった不安や恐怖、ネガティブ要素が原因で発生する。いかに「自然体でいられるか」が大切になってくる。
 父と拓真と共に小さい頃から練習などを通じて培ってきた性格なのかも知れないが、1番は100%の準備をして作り上げた自信だろう。
 

ボクシングで熱狂させたい

Commentブログ筆者
 著書「勝ちスイッチ」は井上尚弥選手のWBSS決勝戦が行われた翌日には大々的に新聞広告が打たれました。NHK「プロフェッショナル」も12日には井上尚弥選手を特集、同週発売のボクシング専門誌はもちろん、ほかに多くのメディアが最速で井上尚弥選手を特集しています。メディアだけでなく多くのファンが今回の決勝戦で井上選手が有利と見ていたのでしょう。
 
 しかし、ブログ筆者は相手のドネア選手の状況をみた時に、もしかしたら井上選手は苦戦する可能性があることを直感したのです。それは、伝説とまで呼ばれるドネア選手の体格にありました。年齢36歳とはいえ、ドネア選手は今回のトーナメントにフェザー級から二階級下げての参戦だったからです。
 
 ブログ筆者の脳裏をよぎったのは、WBC世界バンタム級王者で後に同スーパーバンタム級王者、同フェザー級王者の3階級制覇を成し遂げた長谷川穂積選手の姿でした。長谷川選手はバンタム級王者時代に5年間王座に君臨し10度の防衛を果たした王者でした。このクラスでは無敵だったのです。
 その長谷川選手が階級を上げてフェザー級の王者になるまでには、バンタム級時代のように相手をKOで倒したように、簡単には勝利を掴むことができませんでした。少しのウエイトや体格の違いがボクシングの試合には大きく影響してくるのです。
 
人間離れしたパワーを証明
 井上選手とドネア選手との試合でも、ドネア選手はウエイトをバンタムに戻したとはいえ、井上にとっては初めての判定になりました。井上選手はそれまでの最強相手を早いラウンドで倒す試合ではなく、フルラウンドを闘いましたが、やはり、5階級を制覇したドネア選手の力があったことを証明しています。
 そして、常に強い選手と対戦して、ボクシングを通じてお客やファンを「熱狂」させたいと話す井上選手の、人間離れした並々ならぬパワーを証明した試合でもあったのです。

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